座りっぱなしの人は運動効果が半減しているかも?

「毎日ウォーキングしている」「週3回ジムに通っている」、そこまで努力しているのに、なぜか体が重い、疲れが取れない——そう感じたことはないでしょうか。

解決策は「もっと激しく運動する」ことではありません。座っている時間をこまめに中断し、筋肉に収縮の機会を与えることです。これを忘れると、運動効果も半減しているかも知れません。

疲れとは


疲れとは、体や心への負担が積み重なった結果として起きる、パフォーマンスの低下を指します。本来なら休息をとれば回復するはずのものですが、現代人の多くは「十分寝ているのに疲れが残る」「原因不明のだるさが続く」という状態に陥っています。その背景に、実は「座りっぱなし」が深く関わっているかもしれません。

運動は健康貯金を積み上げる!


運動は、貯金箱に健康貯金を積み上げるイメージです。一方、長時間座り続ける時間は、その貯金箱から少しずつお金を抜き取っている状態に相当します。どれだけ必死に運動しても、座っている時間が長ければ、その効果が半減する可能性があります。

鍵を握るのは、筋肉の中で働く**LPL(リポ蛋白リパーゼ)**という酵素です。血液中を流れる中性脂肪は、このLPLというポンプの働きによって初めて筋肉のエネルギーへと変換されます。ところがこのポンプは、筋肉が収縮しているときにしか動きません。座っている間、太ももやお尻といった大きな筋肉はほぼ収縮しておらず、椅子が体重を支えることで筋肉の活動は事実上停止してしまいます。

ラットを用いた実験では、座りっぱなしに近い状態を続けることで、このLPLの働きが90〜95%も低下したことが確認されています。さらに注目すべき点として、その後1日4時間の歩行を加えても、ポンプの働きは回復しなかったという結果が出ています。つまり「後から運動を頑張る」だけでは、座り続けた時間のダメージを取り戻せない可能性があるということです。

LPLが止まると、中性脂肪は血液中に滞留し続け、血管の内壁に脂質が付着しやすくなります。結果的に動脈硬化のリスクが高まるわけです。

さらに2つめの問題が、筋肉の内側で起きています。体を動かさない時間が長くなると、筋肉が脂肪をエネルギーとして燃やす機能そのものが鈍化します。

使われなかった脂肪は皮下だけでなく、筋肉の中にも蓄積されていきます。この筋肉内脂肪がジアシルグリセロールやセラミドという形に変化し、エネルギーの発電所である**ミトコンドリア**の働きを妨げる可能性が指摘されています。ミトコンドリアの機能が低下すると、エネルギー産生が滞り、慢性的な疲れやだるさにつながるおそれがあります。

人類の歴史約600〜700万年のうち、コンクリートに囲まれてデスクに向かう生活が始まったのはごく最近のことです。私たちの遺伝子はまだサバンナを歩き回っていた頃のままで、長時間じっと座り続けるようには設計されていません。この「進化的不適合」が、原因不明の不調の根本にあると考える研究者も増えています。