疲れが取れない本当の理由
環境変化が現代人の不調と関係
では、なぜこの環境変化が現代人の不調と関係しているのでしょうか。私たちの体には、生き残るための防御システムが備わっています。例えば原始人が目の前にライオンと遭遇した時、危険を察知してアドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンが分泌され、心拍数と血圧が上がり、筋肉にエネルギーが集中します。重要なのは、ライオンから逃げ切ればこのスイッチはオフになり、体はホメオスタシス(恒常性)の状態に戻っていくという点です。
本来、この防御システムは敵に遭遇したときだけ働く生存のためのシステムでした。ところが現代の”ライオン”、つまりストレス源は、SNSの情報、満員電車の騒音、夜中まで消えない人工光、仕事へのプレッシャーなど、終わりがありません。その結果、ストレスホルモンが慢性的に分泌され続けてしまっているのです。
ストレスホルモンのスイッチが戻らないと、体にはさまざまな影響が現れます。まず脳の機能が低下します。過剰なストレスホルモンは脳の海馬の神経細胞を傷つけ、前頭前野の機能を低下させるため、記憶力が落ちたり集中できなくなったりします。次に、ストレスホルモンが長く体内に留まることで筋肉の分解が進み、疲れやすく、損傷した時に治りにくい体になってしまいます。
さらに免疫系も暴走します。本来、病原体と戦うための免疫システムが、終わりのないストレスで疲弊して機能が狂い、自分自身を攻撃し始めます。これがアレルギーや自己免疫疾患の引き金になることもあるのです。
アレルギーは現代の”ライオン”(ストレス)だけでなく、免疫の教育不足も大きな原因となっています。私たちの祖先は土壌菌や家畜、時には寄生虫と共に生きてきました。それらは”敵”ではなく、免疫を訓練する相手だったのです。さらに土壌にはマイコバクテリウム・ヴァッカエという、ストレスへの耐性を高めたり気分を明るくしてくれる不思議な菌がいることもわかっています。しかし現代は、過剰な除菌や舗装された生活によってその機会が奪われています。この免疫の教育不足と環境ストレスという“現代のライオン”のダブルパンチが、現代人の不調の背景にあるのです。