アルコールは少量でも危険?~ガンにならないためには
「一日の終わりの一杯があれば、それだけで十分」と感じている人は少なくないでしょう。かつては「酒は百薬の長」という言葉が信じられ、適度な飲酒は健康に良いとされてきました。しかし現代医学の研究が積み重なるにつれ、その常識は大きく覆されつつあります。
医学誌「Cancer Epidemiology」に掲載された、過去62件の研究を統合したメタ分析によると、アルコールの摂取量が増えるほどがんのリスクが直線的に上昇することが明らかになっています。以前の研究では「まったく飲まない人より少量飲む人の方がリスクが低い」とするデータも存在しましたが、そこには体調不良で飲めない人が「非飲酒者」として含まれていたという問題がありました。その影響を除外して再分析すると、お酒は少量であっても健康リスクと無縁ではないという結論が導き出されています。
特にがんとの因果関係が明確に示されているのは、食道がん・口腔がん・喉頭がん・肝臓がん・乳がん・大腸がん・胃がんの7種類です。そしてリスクの観点から見ると、一度に大量に飲むよりも毎日少量ずつ飲み続ける習慣の方が危険とされています。

その理由は、体内でのアルコール代謝の仕組みにあります。アルコールは肝臓で分解される際、まず「アセトアルデヒド」という物質に変わります。これは強力な発がん物質であり、通常は肝臓の酵素によって無害な酢酸へと変換されます。ところが毎日飲酒を続けると、アセトアルデヒドが全身の細胞に慢性的にさらされる状態が続くことになります。
最新の分子生物学的研究では、アセトアルデヒドが単に細胞にダメージを与えるだけでなく、DNAを物理的に切断し、異常な結合を引き起こすことが確認されています。さらに厄介なのは、このアセトアルデヒドがDNAを修復するための酵素そのものをブロックしてしまう点です。つまりお酒は、DNAを壊しながら同時に修復も妨げるという二重のダメージをもたらしているわけです。
性別によってリスクの現れ方にも違いがあります。男性では飲酒の頻度ががんリスクに直結しやすく、女性では一度に大量に飲むことが乳がんリスクを大きく引き上げると指摘されています。これはアルコールが女性ホルモンであるエストロゲンの血中濃度を上昇させ、乳腺細胞を刺激するためだと考えられています。飲酒量が「適量」の範囲内であっても、この影響は生じます。
また、口腔・喉・食道といった部位はアルコールに直接さらされるため、特にリスクが高い場所といえます。アルコールには粘膜のバリア機能を低下させ、有害物質を体内に取り込みやすくする性質があります。そこにたばこが加わると、口腔がんや食道がんのリスクは単純な足し算ではなく、10倍・100倍規模に膨れ上がることもあります。

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肥満や血糖値の異常もアルコールの毒性を増幅させる要因です。肥満の状態では体内で慢性的な軽い炎症が続いており、そこにお酒が加わることで炎症がさらに悪化します。肝臓においては、アルコール性肝炎を背景にがんリスクが高まるメカニズムも知られています。
「ワインなら体に良いのでは」と考える人もいますが、現段階の研究では、アルコールの種類よりも摂取量そのものが重要とされています。白ワインやビールを好む層で特定のがんリスクが上昇する傾向も報告されており、飲み物の種類でリスクを判断することは科学的に支持されていません。



